旅たびエッセイ


旅に出るとスケッチをすることにしている。
その土地の風景,人びと,物など何気なく気づいたこと、気に入ったものなどを描く。
知らない初めての土地はそれだけで筆が運ぶものだ、だから海外に出かけたときには特に興が乗る。
目にとびこんでくるものが全て新しく映り、ついつい筆が走る。
海外旅行はほとんどが団体で行くことになる。この手の旅はとにかく時間に追われ場所も観光地となる。社員旅行で香港へ行った時は,ビクトリアパーク、クンヤントン寺院など定番スポットを駆け足で見て回ることになった。気ままな一人旅とちがって、時間と場所を拘束され焦って描くことになる。しかし、その焦ることがかえって自然に筆が運ぶことにつながるから不思議である。手の感覚にまかせて理屈や人目を気にしないで即興的にチャッチャカ描いた時に、さらりとしたいいのが生まれるように思う。
過去,何度か海外へ行っているが、あちらの人間は性格が大らかというか、人なつっこいというのか自然な感情と関心とを寄せて近づいて来る。こちらとしても見知らぬ初めての土地ということも手伝い、気軽に描いてあげたりする。いい意味で自分を解放させる自由さと、目新しいものに対する刺激を受けることができる。失敗してもちょっと気恥ずかしい程度で、旅の恥は描き捨てといったところ。
ところで、去年は大変ぜいたくな旅をさせてもらった。
バンコクへ社員旅行で5日間、帰国して2日後にはなんとハワイのワイキキビーチでビールを一杯!という夢のような日程である。スケッチブックを数冊買い込んで出かけた。

バンコクは混沌とした都市。乾ききった大地に、真っ青な空、発展途上の埃っぽくムンムンする熱気が四方八方に満ち溢れていた。熱気だけでなく排気ガスも頭にガンガンするほど撒き散らされ、ポリスマンはマスクをして交通整理にあたっている。そしてあちらこちらで道路工事やビル建設の工事の音が聞こえる。しかし何といっても仏教の国である。黄金に輝く仏教寺院と仏像たち…描く対象に事欠くことがなく楽しかった。
引き続いてハワイ。まさにガラッと音が聞こえるほど環境が変化した。着いたところは、やけに明るいリゾート地。バンコクと全く違う。イラストレーターが描くような世界がそのまま現れたようで、私にとってあまり描きたくなるような対象が見つからなかった。仕事の合い間を縫って,2週間近くも会社を離れてリフレッシュさせてもらったが、全く正反対のイメージの異なる土地へ、日を置かずに行くものではない。気持ちの切り替えがうまくいかない。ハワイはやはり遊びに行くところである。

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